【スウェーデン】バルダー高校で10代のデジタルエチケットプログラムを実施
2024年11月に初の海外展開として北欧スウェーデン・シェレフテオにあるバルダー高校(Baldergymnasiet)の1年生から3年生までの複数のコースの生徒の皆さんに10代のデジタルエチケットプログラムを受講していただきました。
バルダー高校は多文化共生が特徴の公立高校で、スウェーデン国内外のさまざまな国や地域出身の生徒が学んでいます。今回のプログラムでは、1年生から3年生までの複数のコースの生徒が参加し、クイズやグループディスカッションを通じて著作権の基本知識やクリエイティビティについて学びました。
10代のデジタルエチケットプログラムを受けていかがでしたか?
【生徒の感想】
「著作権についてはインターネットで得た知識はありましたが、授業でしっかり学んだのは初めてです。特に印象に残ったのは、著作権が公有(パブリック・ドメイン)になる仕組みです。クリエイターが亡くなった後、一定の年数が経つと作品が誰でも使えるようになることは知っていましたが、具体的な年数については今回初めて理解しました。
AI生成コンテンツについても、著作権で保護されるかどうか考えたことはありました。SNSで多くの人がこの問題について議論しているのを見たことはありますが、自分自身の意見をしっかり持っていたわけではありません。ただ、人工的に作られたものだから著作権は必要ないのではないか、と漠然と思っていました。でも、プロンプトを入力するのは人間であり、そこには別の視点や考え方もあることがわかりました」
プログラムを受けた生徒の声(その他一部抜粋)
- 「著作権については、家でSNSやYouTubeを通じて学んだことがありますが、何かが創作された瞬間に自動的に著作権が発生するという仕組みは、とても興味深かったです」
- 「子どもが描いた絵にも著作権が発生するという話が特に面白かったです。これまで全く知らなかったので驚きました」
- 「著作権はアート作品など、自分の創作物を守るための権利だと理解していましたが、何かを作った瞬間に著作権が生じるという点は新しい発見でした。また、自分が書いた詩やアートが保護されるのは良いことだと思います。著作者の死後70年後に権利が消滅するという話も興味深かったです」
- 「特にAIアートに関する議論は、哲学的な側面や『独自性』という概念が社会でどう受け止められるかという問題にもつながっていると感じました」
- 「すべての内容が良かったですが、特にクイズが面白かったです。新しいことを学べて理解しやすかったです」
授業を実施した教員の声
今回の授業を通じて、多くの生徒が著作権は「私たち全員に関係するもの」だと気づいたと思います。スウェーデン社会は個人主義的な傾向が強いですが、他人の立場に立って考えることが共感を生む第一歩です。そのためにも、自分自身が創作者になる経験は非常に重要です。
また、AIツールについても創造性の面から単純に「悪」とするのではなく、その可能性とジレンマの両面を考える機会になりました。AIを使ったアートも、クリエイティブなツールとして創造性を発揮する手段になり得ることを示してくれたと思います。
共感的な視点を育てる方法としては、自分自身で何かを創作し、その作品の著作権をどう扱いたいかを考えさせることが挙げられます。例えば、生徒が授業で制作物を提出する際に、その作品を先生がどのように使用してよいかを生徒自身に決めさせる、といったプロセスを導入することも良いかもしれません。これを繰り返すことで、生徒たちは自然と著作権についての理解を深め、クリエイティブな視点を養う良い訓練になるでしょう。
これまで著作権について特化した授業を行ったことはありませんでしたが、AI技術が普及する現代において、著作権をしっかりと学ぶ機会はますます重要だと感じています。今回のプログラムには、非常に良い意味で驚きました。著作権の基本を解説するだけでなく、グループディスカッションや演習、ビデオを組み合わせた構成が非常に分かりやすく、生徒たちも積極的に参加していました。特に、著作権が“自分ごと”であり、クリエイティブな活動に関わる全ての人にとって身近なテーマだと生徒たちが気づいた点が印象的でした。 私自身が普段、授業を計画する際にはクリエイティブな視点を持つよう心がけていますが、自分に適切なツールやスキルがあれば、同じようなプログラムを作ってみたいと思ったほどです。これ以上改善するための特別な提案はありませんが、強いて言うなら、ぜひこのプログラムの続編や「パート2」のような発展版も作ってほしいですね。今回の内容をさらに深めることで、生徒たちにとってより実践的で意義のある学びにつながると思います。